「話す力」「聞く力」の中身は、「交流場面でどのようなコミュニケーションがされるか?」とイコールですね。交流の相手との関係、手段、交流の仕方によって違ってきます。「相手」では、同学年どうしの交流と、異学年との交流では、そこで起きるコミュニケーションも違うでしょうし、テレビ会議と掲示板でも、必要なスキルは違ってきます。さらに、自分たちの地域の調べたことを分かりやすく伝えるために必要なコミュニケーションと、いっしょに作品づくりをいしていくためでは、それぞれの活動場面のめあてのレベルに落として考えると、異なるコミュニケーションスキルが必要なはずです。
さらにテレビ会議、掲示板、ビデオレターを、「どのような活動」に使うのかで身につく力も変わってきます。特に、掲示板やテレビ会議は、利用の幅は広いです。
たとえば、掲示板を使う時に、画像がアップできる掲示板とそうでないもの、書きこみに返事が書けるものと、発言が直線的につみあがっていくものでは、そこでできるコミュニケーションの形も自然に変わってきますね。教育利用を前提にした掲示板では発言に「フラグ(質問!賛成!反対!などのマーク)」をつけられたり、書きこまれた発言と発言にリンクを貼ったり、書きこみを抜き出して要約を作れるものがあります。それぞれに「支援可能な学び」は違ってくるわけです。
しかもそれを、1人1台の環境で使うのか、2人で相談しながら書きこむのか、クラスみんなで内容を考えてまとめてから書き込むのか?といった使う側の工夫や、調べたことの報告に使うか、共同制作の作品づくりの打ち合わせに使うか、雑談に使うか、といった内容によっても、どんな学びになるのかはかわってきますね。
テレビ会議でも同様です。1対1かグループ対グループか、学級対学級か。内容も発表会形式か、ディベート形式か、打ち合わせか?といったことになります。
ビデオレターの場合は、もう少し特定されますね。自己紹介・学校紹介にしろ、取り組みの説明・プレゼンにしろ、1本のビデオテープにまとめて送るという活動は同じです。ビデオ撮影の仕方、内容の伝え方(取材の仕方)、編集の仕方、まとめ方、相手校への送り方、相手校からの感想の扱いまで、一連の活動はすべて学習にできますね。とはいっても時間的な都合、教師のねらいにあわせて、部分的には教師が代行することもアリでしょう。
また、ビデオレターを1回送っておしまいではなく、相手からの感想をもとに自分たちのビデオの良かったところ、直すべきところを考えたり、相手から送ってもらったものと比較したり、さらに工夫して2本目を作成したりしていけば、「ビデオレターを送ってみよう」という体験が、「相手に伝わるよりよいビデオレターを作る」学習になりますね。
ということは、交流学習を実施する前の段階で、「相手にはっきり意見を伝えられる」「相手の主張をよく聞いて、自分の考えと比較できる・お互いの主張を調整できる」「その場に応じたやりとりができる」「はじめての人と積極的にかかわることができる」といった身につけてほしいコミュニケーションに対する態度から、交流の相手や交流の仕方、ツールの選び方を考えていくことも1つの方法だと思います。 スキルの育成方法については、朝の1分間スピーチやディベート、ポスターセッションなどいろいろな方法がありますね。重要なことは、相手校との交流場面「だけ」でコミュニケーション・スキルは身につかないということです。むしろ交流場面をコミュニケーション・スキルを「発揮」させる場面にしたり、自分たちにスキルが足りないことや、逆にスキルが身についたことを「実感」させる場として交流学習を活用することができるのではないでしょうか。 |