交流学習初心者のためのQ&A集

交流をはじめる前に  
 

 交流学習を進めていくと、さまざまなトラブルや課題にぶつかることがあります。Q&Aコーナーでは、交流学習をはじめた人に役に立つQ&Aを厳選して15問、ご用意しました。

  • 【Q1】交流しやすいテーマにはどんなものがありますか?
  • 【Q2】学級で交流するのと、学年全体で交流するのとどちらが良いでしょうか?
  • 【Q3】交流相手の学年が違う場合の留意点はありますか?
  • 【Q4】交流をコーディネートしてくれるNPOやボランティア団体について教えてください
  • 【Q5】交流学習の参考になるサイトを教えてください
  • 【Q6】交流学習を始める前に児童に必要な力はありますか?
  • 【Q7】保護者に交流学習をすることを理解してもらう時の伝え方について教えてください
  • 【Q8】総合的な学習の時間に学校間交流学習をする際、年間計画をどう立てればよいでしょうか。
【Q1】交流しやすいテーマにはどんなものがありますか?   
 
 交流活動を考えるにあたって、校種や学年、経験を問わず交流活動がスムーズにいくテーマがあるのではないかと思っています。たとえば 栽培活動、定点観測などですが、そのほかに取り組みやすいテーマがありましたら教えてください。

 
   栽培活動や定点観測は、「共通の活動」が決まっているタイプの交流ですね。全国お雑煮調査(これも定「点」かな?)や生き物マップづくり、野菜などの流通調べ、方言や地域の昔話など、調べ方が決まっていて、学年によって調べの成果があまり左右されない(または、左右されても比較する意味がでてくる)ものが良いでしょうね。

 他にも2校だけで取り組むのであれば、お互いの学校紹介をするとか、作品やプレゼントを贈る、同じ番組を視聴してから感想を書くなど、気軽に取り組める活動からはじめて、次第にテーマをしぼっていくことも考えられます。はじめの段階で子どもたちにコミュニケーションに慣れさせておくのもポイントです。そして、テーマをしぼる段階で、お互いの学校や地域の違いを活かしたテーマ設定も見つかってくるはずです。

 特に交流をはじめたばかりの先生にとっては、相手校とどう関わっていくかははじめのうちは見えない部分が多いと思います。子どもたちを出会わせながら、先生同士もじっくり意見交換をして、交流「活動」から、交流「学習」に持っていけるテーマを探してみてください。

 

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【Q2】学級で交流するのと、学年全体で交流するのとどちらが良いでしょうか?
 

 学年4学級の大規模校に勤務しています。交流学習をする時に一つ困難点が予想されます。学級で交流した方がいいのか、学年全体で交流した方がいいのかということです。

  学級で交流するとやりやすいのですが、教育の公平性という点で問題が出そうです。学年全体となると、動きが鈍く気軽な取り組みがしにくくなりそうです。

どちらで実践する方がいいでしょうか。また、このようなパターンで工夫できることがあったら教えてください。

 
 
学級か、学年か。2クラス以上の学校ならどこでも悩む問題ですね。


> 学級で交流するとやりやすいのですが、教育の公平性という点で問題が出そう
> 学年全体となると、動きが鈍く気軽な取り組みがしにくくなりそうです。

どちらも正論です。では、どう解決するか?2つのアプローチを考えてみましょう

相手は1校とは限らない:クラスごとに交流相手を変えてみたり、学年総合で取り組んでいる時は、テーマごとに交流相手を用意する手もありますね。テーマごとの場合は、相手が学校でなくとも、地域の人や専門家など、いろいろな人とのかかわりを設定することで、「学校間交流もいろいろな交流相手の1つ」として位置づけることになります。

交流規模に応じた交流内容の工夫:「交流学習」とひとくちで言っても、1対1で顔がみえる関係をつくって密にする交流や、みんなで同じ調査をするなどいろいろなタイプがあります。それによってどのくらいの人数で交流可能か?というのも変わってくるはずです。

学年内、交流相手を含めてお互いのクラスの間で、どのような関係をつくり、学習に位置づけるかがポイントになるのではないでしょうか。

 
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【Q3】交流相手の学年が違う場合の留意点はありますか?
 
交流は同学年の場合はやりやすいですが、学年が違ったり、異校種の学校と交流する場合の留意点を教えてください。

 
  学年や校種が違う場合、まず留意点としては

【下の学年が萎縮しないしかけ】:テーマを決めて討論させるような場合、同じ学校内でなくても、低い学年の側から上級生に意見を言いづらいことがあります。討論することで何をアピールしたいのか、何を相手から聞きだしたいのか、ハッキリとした目的意識を持たせることが重要です。

また、異校種・異学年だからこそできる交流のメリット、ねらいもあります。

【異学年の取り組みをモデルにする】:上級生の調べ方やまとめ方を参考にすることで、クラス内にはなかった学び方を身につけるチャンスになります。逆に、なかなか活発に意見を出せない中学生、高校生は、元気な小学生にたくさん質問されることで、積極的な姿勢を引き出すきっかけづくりもできます。

【異学年で同じ内容に取り組む】:小学生と中学生、低学年と高学年では、それぞれ同じテーマに取り組んでいても、その調べ方や対象、教科とのつながりは違ってきます。たとえば環境問題について地域の取り組みを丁寧に調べている小学生と、グローバルな環境問題の広がりを学んでいる中学生が交流することで、より多面的に環境問題を捉えることができるようになります。

【1つの活動を分担する】:小学生の子どもたちが国際交流をする時に、通訳として中学生が活躍する場を設定するなど、上級生から教えてもらったり、手伝ってもらう場面を設定することもできます。この場合、それぞれの活動から何を学ばせるのかを明確にしておくことで、どう関わらせたらよいのかの基準を設けることができます。

 
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【Q4】交流をコーディネートしてくれる団体はありますか?
 
 教師が「授業」と「交流」双方のコーディネートをするのは大変な労力です。
交流をコーディネートしてくれるNPOやボランティア団体のようなものがあったらお力をお借りしたいと思います。 そのような団体や活動内容をご存じの方はお知らせください。

 
 


「交流学習」そのものをコーディネートしてくれるNPOや団体は難しいと思います。国際交流では、JEarnが世界各国との交流を支援していますが、国内の交流学習では、交流をサポートする団体というのはあまりないようです。

 ただし、テーマがすでに決まっている場合、全国の交流プロジェクトはたくさんありますので、そういったところに参加してみるのも手ですね。全国で取り組むプロジェクト型の交流学習の場合、活動時期や内容が決まっているので、プロジェクトの流れに沿って交流を展開できますし、他校の実践を参考にしながら自分たちの交流をすすめることもできます。

 また、地域の教育系、環境系等のNPOや関係諸団体は、独自のネットワークを持っています。その方々と共同で学習を続けていくと、自然と交流が生まれます。そのような方々に「交流できる学校ないでしょうか?」と聞いてみると、意外と良い交流相手を探してくれます。

 

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【Q5】交流学習の参考になるサイトを教えてください
 
 交流学習を始める時に、自分の中で実践の全体的なイメージを持ちたいと考えています。
スタートからゴールまでいかに実践していくかということです。
そのための参考サイトがありましたら教えてください。
もちろんこの「はじめてみよう!学校間交流」もその参考サイトなのですが、その他に知っているものがありましたら教えてください。

 
 


 実践事例が紹介されているサイトは
「みんなで作る教育実践事例eCase」 などがありますが、「スタートからゴールまでいかに実践していくか」をしっかり解説しているサイトはまだ少ないですね。 NHKの学校放送番組の中にも、学校間交流の事例を紹介している番組がいくつかあるので、そちらを参考にしていたくと良いでしょう。

「おこめ」2002年第1回「おこめを学ぼう」(宮城県南小泉小学校と富山県の水橋中部小学校の交流の様子です)
 

「川」2002年第15回「川サミットを開こう」(大阪府守口市立三郷小学校、岐阜県大垣市立静里小学校、岡山県岡山市立平福小学校の3校による川の環境について話し合う会議を開いたときの様子です。)
 

 
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【Q6】交流学習を始める前に児童に必要な力はありますか?
 
交流学習にチャレンジする場合、どのような形態を取るにせよ、
相手の顔が直接見えないコミュニケーションが中心になると思います。

交流学習を始める前に、児童に身につけさせておきたい力(スキル)に
どんなものがありますか。 もしそういったものがあれば、教えていただければと思います。

 
 

 
交流学習の形態や使うツール等により、身につけさせておきたい力(スキル)は様々ではないかと思います。たとえば以下のようなものが挙げられるでしょう。

・自分の考えを作文化できる力(掲示板への書き込みの時活用)
・自分の考えをスピーチ等で表現する力(ビデオレターやテレビ会議の時活用)
・タイピングスキル(掲示板のタイピングでこれができるとできないでは表現する量が大違いです。)

 その一方で、「力がないと交流学習はできない」のではなく「力をつけるために交流学習を組み込む」というスタンスもあります。交流ではコミュニケーションが大切ですので、「話す、聞く、書く」力が基本になる力だと思います。例えば、毎朝一分スピーチを行わせて、スピーチの後には、感想発表の時間を取り入れて、聞く力を高める機会を作ったりします。さらに「分かったこと、質問、発表の工夫」を述べるように指導することもできますね。

 また、例にあげた力が不足していることを気付かせるきっかけとして、交流を生かす先生もいらしゃいます。そういったことから、まずは学級経営と意欲、さらに段階に応じた「話す、聞く、書く」力ではないかと思います。

 最後に一つ付け加えると、「相手を思いやる力」というのもあるでしょう。 会ったことのない相手と交流をするわけですから、ふだんの学級の生活の中で身につけていかなければいけないと思います。

 
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【Q7】保護者に交流学習を理解してもらう時の伝え方を教えてください
 
保護者には学校教育についていろいろな考えの人がいます。「いろいろな体験をさせてほしい」「もっと学力をつけてほしい」等、さまざまです。
これから交流学習をすることを保護者に伝えようと思います。どのような形で伝えたらいいでしょうか?
あるいはスタートしてから、喜んで学習している子どもたちの様子を伝えた方が効果的かなとも思っています。

 
 

「本物の体験を!」とか「学力が落ちるのでは!」と言う声も確かに多いですね。交流学習はそういった学習とまったく無関係のものではないと思います。

体験と結び付けた交流学習を仕組む
保護者だよりで様子を報告する(楽しんで活動する様子、どんな力が育っているか=特 に国語と結び付けて記述)
懇談会で活動の様子をプレゼンテーションする

といった形で交流学習が何のための学習なのかをアピールしていくことは大事ですね。

 子ども達が満足し、力がついたことを認識すると、広報担当者となり保護者に成果を伝えてくれます。あと新聞の地方欄に学習の様子を掲載してもらったこともあります。これはなかなか効果的でした。

 実践する前の段階では、次のような方法があります。

 【以前担任した学級の交流学習の様子を学級懇談会で紹介をする】:「今度この学級でも行う予定です。子どもたちの意欲的に取り組む様子が見られると思います。」というように宣言する。保護者の期待感が膨らむと同時にその場で疑問にも答えられます。

 【交流前の「仕掛け」の授業の様子を学級通信で伝える】:「テーマについてご家庭でも話題にしてくださると嬉しいです」と書き添えておく。学習のことを家族で話すことは、子どもたちを交流学習にいざなうことになります。
 
 さらに、交流学習の様子を学級通信で発行していくと、それは保護者の交流学習の最大の理解につながります。同時に自分の実践記録にもなって一石二鳥です。

 
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【Q8】総合的な学習の時間に交流学習をする際、年間計画をどう立てればよいでしょうか。
 

 学校間交流を総合的な学習の時間の活動にどのように生かしていったらよいでしょうか。課題設定段階に取り入れたり、発展の段階に行ったりといろいろな場面での設定が考えられるだけに活動計画を立てる際にいつも迷います。先行事例があったら教えてください。

 自分の実践の見通しを持ったり、管理職や同僚の理解を得たりするために、交流学習の年間計画を立てたいと考えています。 年間の計画を立てる時にどのような点に留意をしたらいいでしょうか。特に交流場面の位置づけ方を教えてください。また、他校の具体的な例があったら教えてください。

 
 
交流学習と一言で言っても,いろいろなパターンがあると思いますが、共通する留意することとしては,【目的】を明確にし,【展開】を見通すことだと思います。(これはどんな授業でも当たり前ですね...)

【目的】一番大事なのは,交流学習を行う目的を明確にすることだと思います。何のために交流するのか,交流によってどんな力がつくのかを明示することが,管理職や同僚の理解を得るためには重要だと思います。教科で交流する場合には,教科学習のねらいとの関連をはっきりさせておきたいです。

【相手】あらかじめ交流相手が想定される場合には,相手校がどんな学校かを明示し,なぜその学校との交流が必要なのかを説明できるようにしておくと,交流の目的もよく理解してもらえると思います。

【展開】実際の活動をどのように進めていくの,展開を見通せるものをガントチャートなどで作成しておくとよいと思います。 出会いがないことには,交流は始まりませんので,<出会いの仕掛け>から,お互いのことを知り合い<仲間意識をはぐくむ時期>,意見交換などを通してテーマについて考えを深める<山場>,そして最後の<落としどころ>まで,大雑把にでよいので,学習の流れと交流の位置づけをわかるようにしておきたいです。

【メディア】年間を通した交流となると,様々なメディアを利用して,交流の持続を図ることになると思います。どの時期,どの交流場面で,主にどんなメディアを利用できそうかも想定しておくとよいです。メディアによっては,事前にスキルアップの時間が必要となるものもありますから,展開を見通すチャートの中に,利用メディアを記す欄を作っておくとよいと思います。

【余白をつくる】年度当初,見通しをもつための計画であればなおさら,あまり細かく活動や時間設定を決めてしまわずに大きなくくりで展開を見通して,少し余裕を持って時間設定などをしておくとよいと思われます。本校では,「指導計画に余白をつくる」という言い方をしています。交流しながら,次の展開をさぐることも多いだろうし,当初の見通しを超えて学習が発展していく場合も想定されるからです。

 

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このページは「はじめてみよう!学校間交流学習」 のWebサイトに寄せられた質問をもとに、質問者・回答者の許可を得て再構成したものです

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