学校間交流学習をつくる

学校間交流学習をつくるといっても、何から手をつけたらよいでしょう?このサイトで紹介している、博士論文、書籍等で、「学校間交流学習の授業設計モデル」を提案してきました。このページでは、この授業設計モデルを使って、交流学習をつくっていく手順を具体的に示していきます。とはいってもここでは大まかな概要まで。詳細は、書籍を参照してください(^.^)

■ほんとうに初めての方にオススメするのは・・・?

まったく初めて、学校間交流学習に取り組む場合、まずもって不安なのが相手を探すことでしょう。見つかったからといって、果たしてうまく交流できるのか、テレビ会議などは使いこなせるのか、不安の種はつきません。まずは、初心者の人にとって、もっとも始めやすいパターンを紹介します。

1.知り合いの先生とはじめる。

何はともあれ、交流学習には相手がいないとはじまりません。ところが、この相手校探しがなかなか難しいものです。インターネットで探して、「突然ですが、交流しませんか?」と呼びかけるのも勇気がいりますし、良い返事がもらえるとも限りません。そこで、まずはじめは知り合いの先生、それも直接会って打ち合わせのできる近くの先生をオススメします。研究会の仲間、前任校の同僚の先生など、知り合い・お友だちの先生に「ちょっと面白いこといっしょにやりませんか?」と一声かけてみましょう。

2.教科で取り組む

相手が決まったら、何をテーマに交流するか?が肝心です。「とりあえず自己紹介でもして・・・」とはじめてしまうと、本当に自己紹介だけで終わってしまうこともしばしばです。そこで、交流する「ネタ」が分かりやすく、学習の目的(=交流の落としどころ)もはっきりさせやすい、教科で交流をはじめてみましょう。期間は一ヶ月もかからないくらいの、短期集中でやってみることをオススメします。どんな教科・単元が取り組みやすいかは、本サイトの素材集をご覧下さい。
テーマと交流の落としどころが決まったら、時間ごとにどんなことをするのか、大まかなタイムテーブルをつくってみましょう。はじめて取り組む場合、途中で思うように進まなかったり、方向修正が起きることもあるはずです。それを楽しんでしまえるくらいがいいんですが、それでも、大まかにどんな流れにするのかを打ち合わせておくと、見通しを持って交流できます。また、この「見通しを持つ」ためにも、短期の交流がやりやすいわけです。

3.ツールは必要最小限で。

交流の手段はどうしましょうか?ホームページ、ブログや掲示板、テレビ会議、宅配便などなど、交流にはあらゆる手段が活用できます。自分の学校、相手の学校のネットワーク環境によって使えるもの,使えないものがあります。ここでのポイントは「顔が見える関係をつくる」です。直接会って交流できるのが一番ですが、それがムリならテレビ会議を、それも難しいのであれば写真つきの自己紹介カードを活用しましょう。相手の存在を実感させることが、交流学習の成否を決定します。
情報交換や話し合いをするのであれば、ブログや掲示板がもっとも手軽です。写真を添付できるタイプを使えば、調べたことを交換するのも簡単ですし、「この写真は何だろう?」というところから、意見交換をはじめることもできます。テレビ会議が実現できるのであれば、相手とリアルタイムで顔の見えるやりとりができることが最大の魅力です。温度計を見せ合ったり,登校時の服装を比べるなど,目で見てわかる活動は伝わりやすいですね。なお,一方向の発表をじっと聞いている時間は短い方が良いでしょう。間に質疑をはさんだり,クイズ形式にするなど,双方向の感覚を大事にしましょう。

■「授業設計モデル」で着実につくる

次に、もう少し長期間の交流学習をつくる方法を、順を追って説明していきます。ここで役に立つのが授業設計モデルです。まず、下の図をご覧下さい。

左側の「コミュニケーション」「コミュニティ」「コラボレーション」は、「学校間交流学習とは?」でご紹介した、3つのポイントです。1~10までの順序は、必ずこの順番にしなければいけないわけではありませんが、おおよそこのステップを踏んでいくことで、一通りの交流学習を計画し、実践することができます。このように授業をつくっていく目安となるモデルを「手順モデル」と呼んでいます。1つ1つの手順の中身をごく簡単に紹介しておきます。

ステップ 概要
準備段階 1. 交流相手を見つける 交流の相手を見つけ、お互いの地域、学校の様子などの基本的な情報を交換します。
2. 交流の素材・テーマを考える 地域や学習内容の違いから交流が引き立つテーマや、一緒にできる活動を考えてみましょう。
3. 交流手段を選び環境を整える テレビ会議、電子掲示板など使えるものをリストアップし、児童のスキルを確認しておきます。
4. 交流活動を具体化し計画を立てる 一緒にする活動は何か、そのゴールをどんなものにするのかイメージを練ります。月毎程度のおよその計画を立ててみましょう。
5. ねらいを位置づけ明確にする どの場面でどんな力を育てるのか、重点をはっきりさせます。教科と関連づける場合、単元、位置づけ方も検討しておきます。
実践段階 6. 相手校と出会い,仲間意識を形成する 自己紹介カード、テレビ会議、直接交流など、顔が見える出会いを演出します。話題や活動を工夫し、仲間意識を育みます。
7. 学習者のコミュニケーションを点検する 話す力、聞く力は普段の学習で指導できますが、相手のいる交流場面で確認します。情報モラルの指導も相手を意識した上で併せて指導します。
8. グループと役割分担を工夫する 学習内容、活動に合わせて、相手校のグループの組み合わせや、役割分担を検討します。
9. 関わりあいを生かして追究の質を高める お互いが持ち寄った情報を比較したり、つながりを考えさせることで、学習内容をもう一歩、深めてみましょう。
10. ふり返りと展開を見通す場面を設ける ここまでの活動は上手くいったでしょうか?ふりかえりの機会をつくり、足りないところがあれば付け足しましょう。
前提条件 0. 教師間の連携と周囲への説明をはかる 交流学習が成立するには、教師間の連携は大前提とも言えます。事前の打ち合わせだけでなく、活動中の児童の様子、教師の関わり方など積極的に情報交換しながら進めていきましょう。

10のステップで、おおよその授業づくりのペースをつかんでいただいたところで、もう1つ、別の図を見てみましょう。


※このモデルは、2005年の調査をもとに改訂したものです。博士論文・書籍の頃と少し単語が違います。

 これは、学校間交流学習の3つのポイントに対応して、学習者が得るもの、教師のねらい、授業設計のレベルを対応させたものです。学校間交流学習にはどんな要素があるのか、全体像を見渡すことができるため、「枠組みモデル」と呼んでいます。先ほどの手順モデルで考えたことが、枠組みモデルのどこにどう反映されるのか考えてみてください。たとえば、5の「ねらいを位置づけ、明確にする」は、コラボレーションの層ですから、「学習課題に対するリアリティ」を学習者が得られるように、交流する内容からどんな気づきを得てほしいのか考えます。そして、カリキュラムの中で、どこでどのねらいを達成するのか位置づけを考えていく、といった具合です。

実際には、この3つはモデル図ほどきれいさっぱり分かれている訳ではありません。先生自身、実践しながら3つの層を下りたり、上がったりしながら指導することになります。それでも3つのレベルがあることを意識しておくと、ねらいの立て方、どの場面でどんな指導をするのか、といった戦略の立て方がよりクリアに見えてくるはずです。

ここまでが、授業設計モデルを用いて学校間交流学習を開発する流れでした。10もステップがあったり、枠組みにはいろいろな要素が入っていたりと、なかなか一筋縄にはいかないかもしれません。それでも、こういった手順や枠組みを意識した上で、交流の流れをイメージした時に、以前より少しは見通しがもてるようになっていれば、このモデルも役に立ったと言えるでしょう。すべてを「課題」として1つずつクリアしていくのは大変です。「参考」として皆さんの授業づくりの中に取り入れていただければ幸いです。なお、手順モデルについては、それぞれのステップで考えたいポイントをリストアップした「チェックリスト」も作成しています。素材集のコーナーにアップしていますのでぜひご覧下さい。

■ワークショップもやっています!

最後にもう1つ、ワークショップのご案内です。教育センター、研究会等で交流学習の授業づくりをテーマにしたワークショップを開催しています。半日~一日の研修で、このモデルを使い、学校間交流学習の大まかな単元作成と、開催地域で活用できる掲示板やテレビ会議システムの使用体験ができることをセットにして学ぶことができます。詳しい様子は「イベント」のところをご覧下さい。もちろん、「ワークショップを開いてみたいんですが・・・?」というリクエストも大募集です。ぜひ、稲垣までご連絡ください。