国内交流と国際交流のちがい

学校間交流学習は、国内での交流の場合もあれば、国を超えた国際交流をする場合もあります。どちらも交流していることにはかわりませんが、実践する上でのノウハウや、得られる成果は大きく異なります。この記事では、国内交流と国際交流それぞれの魅力について紹介したいと思います。

■国内交流と国際交流、重点の置き方がちがいます。

 国内交流と国際交流、2つの大きなちがいは、学習活動の力点がちがうことです。下の図をみてみましょう。コミュニケーション、コミュニティ、コラボレーションの3つの層は「学校間交流学習とは何か」の記事で紹介した3つの視点です。
国内交流では、コラボレーションの部分が大きく、コミュニケーションは小さく扱っています。日本国内での交流であれば、日本語でやりとりできる以上、お互いの意思疎通は難しいことではありません。もちろん、方言のちがいがあったり、テレビ会議ではなかなか音声がスムースにいかないこともありますが、言語面での不安を抱えて交流をすることはないはずです。この場合、テレビ会議やメール等による自己紹介で日常的なことでもある程度のやりとりをしていけば、次第にコミュニティ(仲間意識)を育てていくことは可能です。その上で、コラボレーション、つまり交流のテーマ・内容に即したやりとりをしていくことで、交流の成果に到達することができます。言い換えれば、国内交流の場合、どんなテーマ・内容で交流するか、コラボレーションのデザインをしっかりやっておかないと、せっかく仲良くなっても何のために交流をしているのか分からなくなってしまうことがあります。
国際交流の場合、特に日本の子どもたちにとって大きなハードルになっているのが言葉の壁です。小学校の外国語活動も週1時間で海外の子どもたちと自然にコミュニケーションという訳にはなかなかいきません。リアルタイムに交流するのが難しい場合は、ビデオレターにしたり、メールやブログなど文章と写真など、さまざまなコミュニケーション手段を駆使して、まず相手とのコミュニケーションを成立させることが最初の目標になります。そして「この表現で伝わるかな・・・」と不安に思っていても、それが伝わった時の喜びは大きいもの。国際交流の場合、コミュニケーションを通わせることそのものにも大きな価値があると言えるでしょう。その上で、コミュニケーションを積み重ねて仲間意識を育んだり、いっしょにできるコラボレーションを考えていくところは共通です。ただし、海外の学校と日本の学校では、年間のスケジュールがちがうことがほとんどなので、十分なコラボレーションの時間を確保できないこともあります。多くの国際交流プロジェクトでは、決められたプログラムがあるので、それに乗っかりつつ、交流の成果を確実なものにしていくことが望ましいでしょう。

■似ていると思ったらちがっていた、ちがうと思っていたことが同じだった

 もう1つ、国内交流と国際交流のちがいを表現するとすれば、国内交流の場合は、お互い同じようなものだと思っていたのに、以外と知らないちがいがたくさんあったという「ちがい」に気づくことが学びのポイントになることがあります。一方で国際交流では、言葉も文化も自然もまるでちがうと思っていたのに、案外「おなじ」ポイントに気づくことがあります。交流から何を学ばせるのか考える際の視点にもなります。
国内交流の例を挙げてみましょう。社会科でゴミの分別・処理について学習する単元が4年生にあります。この単元で交流すると、どこの地域でも同じだと思っていた分別方法が、実は地域によってちがうことに気づくことがあります。さらに、その背景には、その地域のごみの量、ごみ処理工場や処分場の実態などが背景にあって、自分たちの地域の分別の仕方の意味が見えてくる。そんな学習が展開できます。
国際交流では、たとえば「テディベアプロジェクト」では、日常の様子をぬいぐるみを通してお互いに報告しあいます。そうすると、家で子どもたちが見ているテレビアニメや、生活で使っているもの、食べ物など、共通点に気づくことで親近感がわいてくることがあります。

■国内交流と国際交流、どちらがはじめやすいでしょうか?

 よく、国内の交流学習と国際交流のどちらがはじめやすいか聞かれることがあります。どちらも一長一短がありますので、表にして整理しておきます。

国内交流視点国際交流
知り合いの先生とはじめるのがもっとも手軽です。遠隔地でなくとも盛り上がる交流テーマもあります。全国規模の研究会で交流相手を探したり、姉妹都市などの公的なネットワークを活用してもよいでしょう。交流相手を探す多くの国際交流プロジェクトでは、交流相手の紹介もしてくれます。
教科で交流する場合は、教科書を見ながら交流が盛り上がりそうな単元を探します。教科書会社がちがう場合、スケジュールの調査は必要になりますが、教科書のちがいが交流を盛り上げる要素になることもあります。総合的な学習の場合、環境、福祉、地域など共通のテーマで取り組んでいる場合、報告する相手として交流学習を導入することができます。テーマ・内容を考える交流プロジェクトに申し込む時点で、およそのテーマや活動内容は決まっているので、新たに考える必要がないことが多いです。その分、学校のカリキュラムのどこに位置づけるのか検討する必要はあります。
遠隔の場合は対面しながらの打ち合わせは困難ですが、テレビ会議の練習として先生どうしでしてみるとよいでしょう。学年が異なる場合や、総合での交流の場合、お互いのねらいが異なっていてもかまいませんが、相手校にどんなことを期待するのか十分に話し合っておくことで、交流学習を実りあるものにすることができます。相手の先生との打ち合わせ言葉の壁はありますが、プロジェクトに参加している場合、コーディネータの方が、相手との連絡をサポートしてくださったり、翻訳ボランティアのあるプロジェクトもあります。