学校間交流学習とは?
離れた学校と学校をインターネットで結び、子どもたちが掲示板やテレビ会議で交流しながら学ぶことを「学校間交流学習」と呼びます。交流学習、遠隔共同学習などの呼び方もありますが、このサイトでは学校と学校が交流する形態に着目しているため「学校間」をつけています。以下に示すような特徴をもった学習と言えるでしょう。
このページでは、学校間交流学習についての調査研究の結果から、学校間交流学習とはどのようなものか、探っていきます。
■学校間交流学習の種類
学校間交流学習といっても、その目的、形態にはいろいろあります。国際交流から、同じ地域を流れる川の上流と下流で共同調査をしたり・・・。そこで、交流学習を、交流の規模と、中心となる活動の目的の2軸から分類をしてみました。
この3×4の12タイプの交流学習がどう行われているか?また、そこでテレビ会議や掲示板などがどう活用されているか?を46の事例から比較検討しています(論文「学校間交流実践とコミュニケーション・ツールの関係性」参照)。
◆交流の規模
遠隔独立型 | 地域共同型 | プロジェクト型 |
・2校~数校 ・地理的に離れている | ・2校~数校 ・地理的に近い学校との交流 ・地域に限定されたプロジェクト | ・10校以上 ・運営ホストになる学校,団体がある |
◆中心となる活動
- 交流体験・・・交流体験をすること自体を主目的とする。交流を通して,コミュニケーション能力,表現能力の育成を図る。海外との交流による国際理解・異文化交流体験を意図した実践も含む。
- 実践報告・・・交流校それぞれの学級・学年での実践がベースになり,そこから話し合い活動や発表をすることで交流を深めていく。交流を通して,学習内容を掘り下げ,自分たちの活動を内省する。
- 共通活動・・・共同観測,共同調査など,調べ方のフォーマットを提供し,参加校が調査報告をする活動を中心とする。Webサイトでは,蓄積されたデータを一覧・比較できる。学校名・所在地・連絡先などの情報を提供したり,掲示板を設置することで,コミュニケーションが起こるようにデザインされていることも多い。
- 協働制作・・・参加校の間で絵やWebページなどを”協働”して作品にする活動や,オフラインの交流イベント開催のため,企画・運営を生徒たちが行う活動。
■学校間交流学習でつけたい力
では、学校間交流学習をとりいれる意義、つまり、教師は、何を目的に、子どもたちにどんな力を育てることを意図して交流学習を実践しているのかを整理してみましょう。交流学習は上で示したように、さまざまな種類があります。100校プロジェクト、Eスクエアプロジェクトで実践された126事例をとりあげて、それぞれにどんな「ねらい」があったのかを抽出・整理してみた結果を示しておきます。(学会発表「教師のねらいと活動タイプからみた共同学習の分析」では5つに分類しましたが、その後の調査で以下の6種類として提案しています。)
A:コミュニケーション力:相手に伝わるように発表する,話し合うなどのコミュニケーション能力
B:他地域・異文化理解:相手校との交流を通して,相手の地域・文化を理解したり、自分たちの学校や地域を再認識する
C:学習を追究する意欲:交流テーマについての意見交換を通した学習の広がり・深まりを求める。
D:人とかかわる力:さまざまな人々とのかかわりを通して、相手を理解し、自分を表現し、人間関係を築いていく力。
E:情報活用能力:電子メール,テレビ会議システムなどのコミュニケーションツールを交流場面に活かすことで、情報活用能力の育成を図る。
F:協同作業する力:共同制作,イベントの共同開催といった活動を通して,互いの役割 分担,コーディネートなどコラボレーションの仕方そのものを学習課題とする。
■3つのポイントと学びのリアリティ
学校間交流学習には、1つの学校、1つの教室の中だけの授業にはない、新しい要素がたくさんあります。他校の児童との出会い、他地域の情報を生で知る、教師自身も他校の先生とのティームティーチングになるなど、従来の授業では得難い経験をすることができます。そしてそれはそのまま、「やってみたいんだけど、何が起こるのかよくわからない・・・」という不安をかき立てる要因にもなっています。そこで、交流学習がどんなものか見通しをもつために3つのポイントから考えてみましょう。次の図を見てください。
どうでしょう?少しはスッキリしましたでしょうか?(^.^) そしてもう1つ、何を求めて学校間交流学習をするのか?という問いにも答えておきましょう。先に挙げた5つの目標は「学校間交流学習でなくとも」指導はできます。けれども、学校間交流学習をすることで、より子どもたちを動機づけ、教師のねらいも達成しやすくなります。その原動力を「学びのリアリティ」と呼んでいます。
<コミュニケーション>メディアを通して他地域の人とコミュニケーションできた!という実感。
<コミュニティ>いっしょに学習をすすめてきた仲間だからこその信頼関係。
<コラボレーション>生活地域の違う子どもたちから教えてもらった、いっしょに気づいた内容の確かさ。
このような地域を越えた実感、信頼、確かさといったものを、「学びのリアリティ」としました。教科書・放送番組、インターネットなどのメディアで調べたり、専門化や地域の大人に教えてもらうなど、交流学習で学ぶ内容は、他の手段でも代替できます。けれども、その内容をより実感したり、同じ年代の(けれども異質な)子どもたちの間で分かちあったりする手段が学校間交流学習なのです。
■まとめ
最後に、まとめとして学校間交流学習の定義を3つのポイントにからめて整理しておきます。
1.異なる地域の学校の児童生徒が,インターネット上の様々なコミュニケーション・ツールを用いていっしょに学ぶ
2.交流を重ねながら仲間意識を育てていく。ネットワーク上のコミュニティをつくりながら学ぶ
3.教師は、交流のストーリーをデザインする。交流の目的を示し,児童生徒のコラボレーションを引き出す。
学校間交流学習がどんなものかお分かりいただけましたでしょうか?このポータルサイトには、具体的な実践例や、実践された先生へのインタビューなどたくさん掲載されています。ぜひこのサイトで、学校間交流学習の魅力を味わっていってください。